東京・新宿の繁華街にある「新宿東口献血ルーム」。献血者数が全国で最も多く、平日でもにぎわいを見せるが、来訪者のお目当ては「献血だけ」ではない。
いまや献血ルームはちょっとした“イベントスペース”と化している。新宿東口献血ルームでは、マッサージ、メンタルセラピー、ネールサロン、毛髪健康度チェック、手相占いまで、ほぼ毎日何かしらのイベントが展開されている。
この日、実施されたのは、カラーコーディネート講座だ。カラフルな布を次々と胸に当て、自身に似合う色を探る。講座を受けた男性(30)は「献血2回目ですが、イベントがあると再度訪れるきっかけになる」と笑顔で話した。
献血離れを食い止めるべく、10年ほど前から個性的なイベントを展開する献血ルームは増え始めた。東京・秋葉原の「アキバ献血ルーム」では今年3月、“土地柄”を生かして、メード服姿の女性が献血者の手をもみほぐしてリラックスさせる「メードリラクゼーションサービス」を実施した。管轄する東京都赤十字血液センターは「(献血の)ドナーさんに喜んでいただけることならば、今後も展開していきたい」と意欲的だ。
高級ホテルで
イベント攻勢の背景にあるのは、深刻な献血離れだ。平成3年には800万人を超えていた献血者数は低落をたどり、昨年は532万人。特に若い世代の減少が目立つ。
そんななか、高級ホテルのザ・リッツ・カールトン大阪(大阪市)では今年から、宴会場を献血会場として提供し、献血をしてもらう取り組みを開始した。
通常の献血の際には、血を採取した後、水分補給のためにジュースやお茶を配布するが、ホテルでの献血ならではのサービスを展開する。ラウンジなどと同じコーヒーやクッキー、チョコレートを用意し、“給仕”するのもホテルマンだ。
ホテルが献血の場所を提供するのは全国でも珍しいという。「献血者が減っているという現状を聞き、ご協力できないかと考えた」と同ホテルでは意図を語る。
不安」払拭
厚生労働省が3月、献血をしたことがない若者(16~29歳)5000人に献血をしない理由を尋ねたところ、1位となったのは、ずばり「針を刺すのが痛くて嫌だから」(29%)。以下、「なんとなく不安」(28%)、「恐怖心」(23%)といった回答が上位を占めた。また、関係者に特に衝撃を与えたのは、未経験者の4人に1人以上(26%)が献血の種類(採血量など)や方法を「知らない」と回答したことだった。
厚労省では、10月から献血後にめまいを起こして転倒するなどして健康被害を受けた人に対して、医療費を支援する制度を開始した。献血後に何らかの症状が現れるケースは年間5万6000件(16年)を超えることから、“安心できる”態勢づくりに躍起だ。
厚労省血液対策課では「痛みは個人の感じ方もあるし、解消はなかなか難しい。今後は何とか献血の意義を広く分かってもらえる方法を考えていきたい」と祈るように話している。
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「できない人」も増加
献血離れが進む一方で、最近増えているのが「献血できない人」だ。
日本赤十字社によると、赤血球の数が少ないか、赤血球中のヘモグロビンの濃度が低いと、「血液の比重不足」と判断され、献血することができない。献血者の体調悪化が懸念されるほか、輸血の際、思ったような効果が得られないことにもつながるからだ。
昨年、この「比重不足」と判断されて、献血ができなかった人の数は54万人。10年前と比べると約10万人も増加している。日本赤十字社では「はっきりしたことは解明されていない」としながらも、「ダイエットや朝食抜きなど食事バランスの偏りや運動不足などが影響しているのではないか」とライフスタイルの変化を指摘している。